◆STEP4 利害関係者との情報共有と共通価値の構築
STEP3では、共通コスト「ムリ・ムダ・ムラ」を減らし、ゴールを設定しました。STEP4では、既存のビジネスから会社と社会の共通の利益(共通価値)を構築することを考えます。
SDGsを支える重要な理論の1つであるCSV(Creating Shared Value、共有価値の創造)に基づき、商品・バリューチェーン・クラスターの3項目で共通価値を構築していきます。
(1)商品で共通価値を生み出す
商品で共通価値を生み出すには、以下の2つの方法を考えます。
①既存の商品や市場に新しい価値を加える
まったく新しい商品を作るのではなく、今あるものに価値を加えます。
・既存の商品に社会価値を加えて、新しい市場で売る
・社会価値の高い新たな商品を作り、既存の市場で売る
新たな商品は、既存の商品に社会価値を加える形でも作れます。今の社会価値だけでなく、今後生まれる可能性がある社会価値も含めて考え、より魅力的な商品に仕上げましょう。
<例>
・民泊事業を営むAirbnbの旅行+社会価値のプラン:旅先でSDGs課題の現場体験を行う(南極調査隊やバハマ諸島の観光ボランティアなど)
②商品を再定義する
経済価値ではなく社会価値の視点で、商品の価値・顧客・競合を再定義します。
<例>スターバックスは自社の商品を「コーヒー」ではなく、「第三の場所(サードプレイス)の提供」と定義している
(2)バリューチェーンで共通価値を生み出す
企業活動から共通価値を生み出す場合は、バリューチェーンを理解し、収益をあげながら社会価値を高められるものを探します。優先順位の高いものに取り組み、正の影響の場合は最大化、負の影響の場合は最小化を目指しましょう。
経済価値が顧客に対する直接的な価値であるのに対し、社会価値は社会全体に対する価値です。社会は人や組織の集合体なので、さまざまな利害関係者(ステークスホルダー)に与える価値の合計が最大になるよう考えます。
自社の工程をチェックするときは、国連環境計画(UNEP)の公認団体である、GRI(Global Reporting Initiative)の基準を参照するのがおすすめです。GRIの評価項目は、経済・環境・社会の3カテゴリーと33個の基準、それらに紐づく開示項目(サブ項目)から成り立っています。
(3)クラスターで共通価値を生み出す
クラスターとは、企業・サービス・ロジスティクス・各種団体などが地理的に集まった地域経済圏のことです。本社の所在地・営業活動地域・原料を調達している地域などから、自社が属するクラスターを見つけましょう。どのクラスターに属するかは、自分で決められます。
<例>
・愛知県豊田市:トヨタ自動車を中心とした産業クラスター
・茨城県つくば市:学術クラスター
内閣府が中心となって展開しているSDGs未来都市のクラスターを活用するのも1つの方法です。また、地理的なつながりだけでなく、業界や事業のつながりを考えてもよいでしょう。
既存のビジネスで共通価値を構築したら、行動計画の事業モデル化を進めます。STEP5では社会課題から新規事業を考えていきます。
(記事の最初に戻る)