SDGsの認知度は約9割。取り組み方は千差万別

プラスチックストローの廃止や男性の育児休暇取得など、近年、SDGsに関する取り組みが身近なものとなってきました。しかし、SDGsについて、聞いたことはあるけど、まだ取り組めてないという人も多いのではないでしょうか。

今回は、SDGsが生まれた背景やその広まり、協力して取り組むことの重要性などをご紹介します。SDGsの理解を深めるきっかけにしていただければ幸いです。


SDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、人間と地球がこれからも繫栄するために示された持続可能な開発目標です。2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に、17のゴールと169のターゲットとして記されています。

SDGsは2000年に国連ミレニアム・サミットで採択された、MDGs(ミレニアム開発目標)の後身として策定されました。

ミレニアム開発目標は、1日1.25ドル未満で暮らす貧困の人々や5歳未満児の年間死亡数を、1990年に比べて2015年の時点で半減させるなど、一定の成果をあげました。しかし、人類は今もなお、気候による自然災害や経済格差による貧困など、さまざまな問題に直面しています。

SDGsはこのままでは地球上で人類が暮らせなくなるという危機感から、ミレニアム開発目標で達成できなかったすべてのことを成し遂げ、「誰ひとり取り残さない」ために生まれました。


SDGsはかつてない規模とスピードで広まっている

環境や人権に関する国際的な目標はこれまでもありましたが、SDGsほど世界中の指導者が共通の決意を表明したものはありませんでした。

ミレニアム開発目標は主に途上国が直面している問題解決のためのものだったのに対し、SDGsは先進国を含めた全世界に向けられたものです。世界中のあらゆる立場の人が協力し、決意をもって課題の解決方法を考える必要があります。

では、日本では実際にどれくらいの人がSDGsを認識しているのでしょうか。電通が実施した「SDGsに関する生活者調査」によると、SDGsの認知度は2018年2月の第1回調査では14.8%でしたが、その後1年ごとに16.0%→29.1%→54.2%と増え、2022年1月の第5回調査では86.0%を記録しました。約5年で9割近くの人の認知が進み、世代間の差もほとんどありませんでした。

しかし、多くの人がSDGsという言葉を認知していたものの、「内容を含めて知っている」と答えた人は34.2%にとどまりました。ビジネスに取り入れる場合は、しっかりと本質的な理解を深める必要があります。うわべだけの活動を揶揄する、SDGsウォッシュという言葉も出てきました。本質的な理解を深めることこそ、課題解決への近道といえるでしょう。


協力することは重要な要素

SDGsは「相互関連性および統合された性質」があり、17のゴールはそれぞれ関係し合っています。

例えば、環境にやさしい製品を作るために社員に過重労働を強いたり、SDGsの勉強会を開くために本業をおろそかにしたりしては意味がありません。何かを改善するために、どこかにしわ寄せがいくようなやり方は避けたほうがよいでしょう。

一方で、よい連鎖が生まれやすいのも特徴です。例えば、教育が受けられない女の子が学校に行くことで、「4.質の高い教育をみんなに」や「5.ジェンダー平等を実現しよう」のゴールにつながり、教育で身につけた技術を使って仕事ができれば、「1.貧困をなくそう」のゴールに到達できるでしょう。相互関連性をうまく使い、ウィン・ウィンの仕組みを作ることが理想といえます。

また、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」冒頭では、「すべての国とステークホルダーは協力し合ってこの計画を実行する」と示されています。パートナーシップはSDGsを実現するにあたり、非常に重要な要素です。

1人ではできないこと、1社ではできないことも、パートナーと協力することで成し遂げられる可能性があります。自分以外のすべての人、自社以外のすべての会社はパートナーになり得ることを忘れてはいけません。年齢・性別・立場など関係なく、協力し合い、同じ目標に向かって進むことができれば、自然と17番目のゴール「17.パートナーシップで目標を達成しよう」もクリアできるでしょう。


SDGsの取り組み方は自由!

SDGsは17のゴールと169のターゲットとして示されていますが、取り組み方法は決まっていません。今の状況を分析し、想像力をもって工夫を凝らし、あらゆる方向から可能性を探る必要があります。

すでに多くの人や企業がSDGsの取り組みをはじめています。世界的に大きな潮流となり、今まで当たり前だと思っていたことが大きく変わるときがきたといえるでしょう。


終わりに

SDGsは環境問題・海洋プラスチック・飢餓など世界的に大きな問題だけでなく、働き方・健康・ジェンダー平等など、個人に関わる項目も多数あります。当たり前だと思っていたことも、SDGsのゴールと照らし合わせることで、改善の余地に気付くこともあるでしょう。何事も自分事としてとらえ、さまざまな視点をもってSDGsに取り組むことが重要です。


<参考資料>

・電通 第5回「SDGsに関する生活者調査」

https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/0427-010518.html

・外務省 MDGsの成果と課題

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000137905.pdf

・外務省 持続可能な開発のための2030アジェンダ

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

・ユニセフ SDGs CLUB

https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/

<参考文献>

・「やるべきことがすぐわかる!SDGs実践入門~中小企業経営者&担当者が知っておくべき85の原則」泉 貴嗣/技術評論社

・「小さな会社のSDGs実践の教科書 1冊で基礎からアクション、マネジメントまでわかる」青柳 仁士/翔泳社

(文:藤本ゆう子)